公開講演会「食と健康の哲学~健康長寿は食にあり」

 

今年度の佐保会三重支部主催公開講演会は、「食と健康の哲学~健康長寿は食にあり」と題して、上瀬クリック院長 上瀬英彦先生より、スライドによる図示を交えて、わかりやすくお話ししていただきました。

病は気からと言われているのですが、最終的には食物が病気・健康に関わっていると考えています。

「食」という字は、人を良くすると書きますが、食の仕方で良くも悪くもなります。「食べたものが血となり、肉となる」と言われていますが、食べ物がきれいだと血がきれいになり、細胞・臓器がきれいになり、健全になれます。食物によって影響を受けるものに腸内フローラがあり、食べるものによって腸内フローラの菌叢が変わり、血の良し悪しが決まり、健康にも病気にもなるのです。

日本では、高度経済成長期の十年間にファストフードなどの流入により、食べ物が劇的に変化しました。その結果、感染症が減少し、アレルギー、肥満、生活習慣病、心筋梗塞が増加し、脳卒中は脳出血型から脳梗塞型へ変化しました。また、西洋型癌(大腸癌、乳癌、前立腺癌、膵臓癌、胆のう癌など)が増加したように、病気の種類 が変化しています。また、これらの病気が若年化しています。平均寿命は延びていますが、寝たきりや胃瘻による延命ではなく、介護を必要とせずに最期を迎えるためには、健康寿命を延ばさなければいけません。食べ物が間違っていなければ病気は増えないと考え、原因不明の病気は、「食を疑え」をモットーにしています。「病食同源(びょうじきどうげん)」の言葉が表すように、病気と食べ物は密接に関係していて、問題は、何が体に良くて、何が体に悪いのか。

 人の食性は、雑食性と言われ、「バランスよく何でも食べましょう」は、聞こえは良いが、体に良いものも悪いものも何でも食べることは、平均点にしかなりません。体に良いものを偏食することがスーパーヘルシーになるのです。

 


世界中、生態系が「食」を決めてきました。「食」を栄養学という学問で考えると間違うことがあります。「良質のタンパク質」とよく言われます。タンパク質は分解されるとアミノ酸になりますが、アミノ酸自体に区別はなく、含有量の違いのみです。良質のたんぱく質を多く食べた結果、日本人には、コレステロールが増えました。では、肉と魚はどこが違うのかというと、脂質に違いがあります。絶対に摂ってはいけない脂質は、トランス脂肪酸ですが、マーガリンやショートニングに含まれています。摂りすぎてはいけない脂質は、ω-6不飽和脂肪酸


(ごま油、サラダ油、大豆油)、とっても悪くない脂質は、ω-9オレイン酸(オリーブオイル、キャノーラ油)、たくさん摂った方が良い脂質は、ω-3系のEPAとDHA(魚の油)です。EPA、DHAは、摂取量の上限がわかっていません。摂り過ぎがないのです。また、「牛乳は骨を強くする」と言われてきましたが、スウェーデンの十万人調査によると「牛乳を飲むと骨を弱くする」そうです。他にも、調理法によってカロリーが大きく変わる、やせの大食い、食べる順番で血糖値が変わる、同じ食材でも加熱と非加熱ではインスリン分泌量が変わるなど、食に関する間違いはたくさんあります。

 

 

生態系から考えると、人工物は生態系を狂わせます。ヒポクラテスは、「人は自然から遠ざかるほど病気に近づく」と言っています。食を個の保存・種の保存で考えるならば、ヒトが食べるものは、なるべく種として遠いものが望ましいのです。哺乳類よりも鳥類、魚介類。植物ならさらに遠いと考えられます。

 

カロリー栄養学では、説明ができない事例がたくさんありますが、これをエドワード・ハウエル提唱の酵素栄養学で考えると、理解できます。酵素栄養学とは、「人体の一生で作ることのできる酵素の総量に上限があり、これが消費されすぎると病気の原因となって、寿命は縮む。食べ物から酵素を取り入れれば、食物の酵素が消化を助け、人体自身の酵素の分泌が少なくてすむので、酵素の浪費を抑えることができる」という考えです。そこで、酵素を失活させた加熱食品ではなく、非加熱で食べることが重要になります。非加熱食品摂取のすすめにより、調理も調味料も不要の「フルーツ」の評価ががらりと変わりました。酵素食品であり、自然食品である果物は、朝食前に投与するとよい薬であると言えます。果物への誤解として、血糖値が上がる、体重が増える、中性脂肪が増える、糖尿病になる、冷える、カロリーが高い、体に悪い等があります。これらは、日本のみで信じられていることです。高カリウム血症の場合だけ控える必要がありますが、酵素食品として果物は薬なのです。

 

以上のことから、朝は果物のみ、昼と夜は主食をご飯、副食は「まごわやさしい」、間食は控え、我慢できない時は果物。食べる順番は、非加熱食品→加熱食品の食物繊維のあるもの→加熱食品のたんぱく質→ご飯とする、食事を勧めます。食物酵素を多く摂取すると代謝酵素が増加し、代謝の良い体となりダイエットにもなります。最初に摂った野菜の食物繊維が糖質の吸収を抑え、食後の血糖値変動を抑制し、糖尿病にも効果があります。

 

昔は、「病は気から」と言われていました。これは何故かというと、

当時はみんな同じ食生活だったので、差は、『気』しかなかったからです。

 

最後に、食で大切なことは、体に良いからと美味しくないものをいやいや食べる等、食でストレスを感じてはいけないということが大切です。「食は楽しく、人生も楽しく」でなければいけません。

 


 

参考 上瀬先生 著書

 

 

 食と健康の哲学 健康長寿は食にあり  出版 ルネッサンス・アイ

 

  「フル・和食」のすすめ        出版 文芸社      

 

  今、子どもの『食』を考える      出版 文芸社      

 

 

 

参考 まごわやさしい

 

 

「まごわやさしい」とは健康な食生活に役立つ和の食材の最初の文字を覚えやすく言いあらわしたものです。

 

「ま→豆」納豆大豆豆腐・あずき・黒豆・油揚げ・高野豆腐など)

 

「ご→ごま」(アーモンド・ごま・ピーナツ・くるみ・栗・ぎんなんなど)

 

「わ→わかめ」ひじきわかめ・のり・昆布・もずくなど)

 

「や→野菜」ほうれん草トマト白菜キャベツセロリもやしなど)

 

「さ→さかな」(青魚や鮭など)

 

「し→しいたけ」(まいたけ・マッシュルーム・しいたけ・しめじ・エリンギ・なめこなど)

 

「い→いも」(じゃがいも・さつまいも里芋・山芋など)